第57章 先は長い

「……私、言ったよね。約束する。野口颯汰と、恋人のふりはもうしない」

南坂海乃は大きく息を吸い込んだ。胸の奥に沈んでいた何かを、ようやく下ろしたみたいに。

「借りを作るのは好きじゃない。それに――無関係の人まで巻き込みたくないの」

「マジか?!」黒谷優は目を見開き、喜びのあまり灰皿代わりにしていた手元を誤って、火のついたままの煙草をハンドルに押し付けかけた。

「でも……」

海乃は言葉を切り替え、氷みたいな視線を向ける。

「それとあなたは無関係。私と先輩の気持ちは、演技をやめたからって変わらない」

「今すぐロック外して。降りるから」

黒谷優は煙草を揉み消した。目は血走り、呼吸だ...

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